飲食器の安全性を大幅に高めるため、自主的な目標値を新たに策定しています。
それまでは陶磁器向けに作られた日本の食品衛生法を基に、飲食器における自主的な安全性の目安を設けていました。この目安になる基準を今後改定していくことにしました。現時点では、ISO国際基準値を目標値としています。強い酸性の食品との接触(*注)を想定して、溶け出す金属の値を測定します。
■容器の品目(形状) Pb / Cd溶出 ISO6486-2基準値は下記の通り
深型(深さ>25mm) 小容量<1.1L 2.0mg/L以下 / 0.50mg/L以下
深型(深さ>25mm) 大容量≧1.1L 1.0mg/L以下 / 0.25mg/L以下
碗、マグ類 0.5mg/L以下 / 0.25mg/L以下
( mg/L = ppm )
■去る平成19年9月27日、新素材・新製法を用いて製作した「錫鎚目ちろり大(通称:うずら形)」(*写真)の溶出検査をしました。これは、深型容器(深さ>25mm) 大容量≧1.1Lに分類されます。 国指定公的検査機関にて検査の結果、 (試験方法、厚生労働省告示第201号) 鉛 0.30mg/L 、 カドミウム 0.00mg/L という値が測定されました。
これは非常に厳しいISO基準値をも下回る、伝統的な製法で用いる再生地金より格段に安全性の高い素材だと判ります。この材料を、平成19年夏以降の新作分より適用しています。 *全ての製品を手作業による製作に頼っているため、移行には数ヶ月かかると思います。また、それまでの製品も問題なくご使用いただけます。通常の食器としての使用では、人体に影響を与えるほど不純物が溶け出すことは皆無です。どうぞ安心してご利用くださいませ。
(*注)酢(酢酸)に器物を24時間さらしておかれたことを仮定しています。
<2007.11.10 追記> 他の新作分の溶出試験結果が出ましたので、下記の通りご報告いたします。 今回酒器を中心として行った検査品は全て、Pb0,20ppm以下、Cd0,02ppm以下と、厳しい国際基準と照らし合わせても、非常にクリアな数値が出ています。 日常の使用では、飲食器をこれほど強い酸に長時間さらし、しかもそれを摂取することなどありえませんが、アメリカ・ヨーロッパではここまで規制が厳しいのだと実感します。
主に中国からの輸入品から自国の製品を守るため、輸入制限を主目的とし規制している事情もあるようです。 一方で、この環境性能を高めると材料費が極端に跳ね上がってしまうこと、成形・仕上げの難易度が増すこと、古美がつきにくいこと、伝統的な錫の器づくりそのものに多大な影響を及ぼします。
材料の含有量試験はこちら。鍛造品飲食器に用いる、錫97%、銅3%の圧延地金。 ただし、酸性の飲み物を長時間放置して、それを飲用しないでください。錫にせよ、銅にせよ、鉄にせよ、行き過ぎた過剰摂取は体の不調をきたすことがあります。いずれも毒性はかなり低く、また胃腸で吸収されずほとんど体外へ排出されることがわかっています。 しかし過去には、開封後長期間放置された缶詰の中身を食べた人の気分が悪くなった、内側に施された金属めっきを過剰摂取したのでは、と疑われたことがありました。