約2ヶ月に渡って、ほぼかかりっきりになっている仕事がありました。都市型リゾートホテルのお風呂場の金具類です。その製作風景を一部ご紹介いたします。
まず最初の写真は、お風呂場にてシャンプーとリンスのボトルを置いておくための棚です。幅約20センチほど、無垢の錫合金にて製作しています。金鎚で叩いて身を締め、キラキラと輝く美しい光沢のある肌作りをしています。
大まかな形の成形には、鑢(やすり)類を用いて削りだします。そのままだとざらざらと荒れているので、鋭利な刃物を用いて一皮剥き、表面を研ぎあげます。
この写真は、石鹸を置いておく台。ソープディッシュとも呼ばれます。三次曲面を描いているため、金床(通称:鳥口もしくは鳥打ち)にあてがい外側から打ち延べます。
金床の曲面と器物の曲面がいい塩梅に噛み合うと、表面が滑らかで美しい肌が生まれます。叩く外側よりも、あてがわれる内側の肌作りの方が格段に困難です。
このままでも十分に美しい肌ですが、さらに研磨機を用いて研ぎあげます。設置場所が湿気の多いところですので、キズ一つ無い肌を作っておきますと耐食性がさらに高まります。
この写真のほか、バスローブを一時かけておくためのフックや、コップを設置しておくためのスタンドなども製作しています。いずれも既存のものではなく、この高級ホテルのためだけに一からデザインした創作の品々です。浴室のデザインに調和するよう、モダンかつ端正で、素材の持ち味を最大限に活かしたデザインにしました。