美器 ー優美な錫器の、匂い立つエロスに溺れるー

2010.06.15  展覧会

京都造形芸術大学主導のもと立ち上げられた「清課堂プロジェクト」。

本年で30周年を迎える、清課堂ギャラリーの固定されつつあるスタイルを根底から打ち破ってくれるべく今回、プロジェクトメンバーの学生5名が一丸となってこの展覧会を企画し発表いたします。

 

 京都造形芸術大学主導のもと立ち上げられた「清課堂プロジェクト」。
本年で30周年を迎える、清課堂ギャラリーの固定されつつあるスタイルを根底から打ち破ってくれるべく今回、プロジェクトメンバーの学生5名が一丸となってこの展覧会を企画し発表いたします。

●清課堂プロジェクト、ついに始動

プロジェクトメンバーとは、2010年3月の記事でも紹介しました“あの5名”です。ホテルフジタでの展示会の際には、非常に手際よく会場の設営をサポートしてくれました。
そんな彼らから本展の企画案が持ち込まれたのは、桜の季節も終わり深緑が薫り始めた頃のことでした。

「清課堂の錫器を使って“エロス”をテーマにした展覧会がしたい。」

彼らはホテルフジタでの展示会の前後、職業体験として数ヶ月にわたり清課堂の仕事を手伝ってくれていました。その中で、普段の生活では馴染みがまず無かったであろう錫の器に触れ、それの持つ深い魅力を肌で感じとってくれたのだと思います。

錫の器の魅力を解読し、如何にして世の人々に伝えるか。幾度となく話し合いを重ね、悩みながら試行錯誤を繰り返してきました。そうして彼らが導きだしたこ のテーマは、見事に核心を捉えています。と同時に、この壮大過なテーマに対し、一体どう挑み、そして紐解いていくのか…私の頭に不安がよぎったのも事実で す。

●錫器の魅力に導かれて

「錫器を間近で見、自らの手で触れる中で、それまで知らなかった姿を垣間見ることができた。」彼らは口を揃えて言います。さらに、「他の金属器にはない独特の佇まいは、どこか人肌―特に女性の肌に通じる」と。

曲線の柔らかさ、しっとりと滑らかな質感や繊細に光を放つ錫特有の色合い、傷つきやすいその性質。それらに一種の女性性を見出した彼らは、次第にその妖しい魅力にとりつかれていくこととなったのです。

事実、ひとりの学生は「初めはなんとも思っていなかったのに、一度意識し始めたとたん、もうそういう風にしか見れなくなっていた」と、その心の内を語りました。

まるで恋に落ちたかのように、急激に錫の器の虜となる学生たち。それは、私共としても非常にうれしい事でありました。

●清課堂の挑戦、学生たちの挑戦

さて、今回の展覧会は、私たち清課堂にとってもひとつの挑戦だと考えています。若い学生たちとタッグを組み、ひとつの展覧会をつくり上げること、またそのテーマにおいても然りです。

挑戦には常に並々ならぬ不安と、しかしそれを上回る期待、ドキドキと胸高鳴る思いが付いてまわります。それはもちろん彼らとて同じでしょう。

「学生身分なのに、こんな大きなテーマに手を出してしまったという“やってしまった”感がある。」

そう語りながらも、言葉とは裏腹にキラキラと目を輝かせます。

「今まで店頭ディスプレイを見て“しなもの”として錫器を買っていた人たちに、エロスという目線を提示した時どう思いどう感じるのか。想像するとワクワクする。」
「こんなに”エロス”について考えたことはなかった。愛や恋についても。」

このプロジェクトは彼らにとって、おおよそ挑戦の連続だったことでしょう。私共に、お客様に、そして自らに対する―(この記事が公開される頃も、そして展覧会開催中もその挑戦は継続されるでしょう。)

そんな彼らは今回、どのような世界に私たちを誘(いざな)ってくれるのでしょうか。

錫の器に恋した若者たち。彼らは、止められない恋心に向き合い、己を見つめ悶えながらも、必死でプロジェクトを進めてきました。おそらく、疼く気持ちをその心で身体で目一杯受け止めてきた彼らにだからこそできる、そんな展覧会となるはずです。

ご来場くださる皆様にも是非、彼等と同じように恋をしていただきたいと思います。そして、艶かしくも美しい錫の器の姿に酔い溺れていただきたいと思います。


美器展フライヤー

美器−優美な錫器の、匂い立つエロスに溺れる−
期間:2010年6月21日(月)〜2010年6月27日(日) ※会期中無休
時間:午後5時〜午後8時
会場:清課堂ギャラリー
電話:075-231-3661
関連イベント:会期中18:00より、清課堂店舗前にて自家製サングリアとワインを振る舞います。雨天時は店内にて。
Twitter:清課堂ギャラリーアカウント


清課堂プロジェクトとは
「清課堂ギャラリーに新たな展開を」という山中源兵衛の要望から結成された、京都造形芸術大学の3年生5名のチームによるプロジェクトです。彼らは、2月 より清課堂の仕事について知るために見習いとして店舗に通い、錫の魅力を肌身で感じながら、今回の展覧会の企画を練り上げました。建築、インテリア、アー トプロデュース、グラフィックデザインなどそれぞれの専攻や技術を活かし、企画や会場構成、印刷物のデザインを手がけます。

京都造形芸術大学