自分で決められることもあれば、人に委ねたい時もある。とっても人間らしいと思いませんか?

2013.03.01  インタビュー やまなかかづこ 展覧会

“やまなかかづこ”さんへの直接インタビュー第2回です。

新作『tenderly』のお話しを含め、制作への思いを語っていただきました。(インタビューは前回と今回の2部構成となっています)

 

 

― 編むことの魅力を教えてください。

糸を編んでいくと、一切れの布になり、形になることでしょう。編み物と同じですよ。編んでいる最中から、次々とアイデアが出て来て「どんなふうに作ろう?」ってワクワクします。編み始めた時の計画とは全然違うものができてしまうことも多々あります(笑)作品の大小にかかわらず、一本の金属線だったものが立体感をもったときは本当に嬉しいんです。命が宿る、感じでしょうか。

また銅線には色付けができるので、いろんな色があるんです。ジュエリーやオブジェにはカラフルな銅線を使って色のコーディネイトを考えるのも楽しいです。

それから、いつでもどこでも始められて、途中で止めることができる手軽さも私には有難かったです。編み始めた当時は、お店(清課堂)のこともあったし、家事や育児もあったし、制作に集中できるまとまった時間がなかなか取れなかったんです。でも、これはお店番をしながらでも、子どもを見ながらでもできる。だから、これに出会えて本当に良かったと思っています。

 

― 編み始めと今、違いを感じられますか?

あまり考えたことがないのですが、こうして改めて振り返ってみると編み目が違いますね。昔の作品は「ギッチリ」という言葉が当てはまるような印象だったと思います。設計図の段階から凄く細かいことまで記してましたし、正確でした。

何事にもきちんとしていないと嫌だった当時の私そのものなんです。いつも人の目を気にして、いつも緊張して、顔も肩もガチガチに強張っていたように思います。だから友人が作品を見ると「これはあなたね」ってよく言われていました(笑)。

今はもっと自然で自由でありたい。今回の展覧会では『tenderly』を始め、素材そのままの色味を生かしているものが多いんです。シンプルであればあるほど勝負どころと思っています。

 

― 新作『tenderly』について教えてください。

これは今の私そのものなんです。一人の時も楽しいけれど、誰かに頼りたい時もあるでしょう?自分で決められることもあれば、人に委ねたい時もある。とっても人間らしいと思いませんか?

7年前にここで開いた個展の前後に、『tenderly』をパッと閃いたんです。そのときの設計図からは随分と違う形になりましたが、途中で迷い、ブレて、変化していくからこそ作り続けられたと思います。

また、視覚的にも私の精神的にもギッチリしていた作品づくりの反動なのかもしれません。昔は他の人がなんて言っても聞く耳を持てませんでした。でも、年を重ね、大きな災害もあって、色んな事をさらけだし、受け入れることがとても人間らしいと思えるようになりました。それと同時に、今もこうして作品を作り続けられることを幸せに感じています。

 

― 特にどなたに見てもらいたいですか?

私を知らない人、若い世代の人ですね。数年前までこのギャラリーの企画や運営を私がしていたので、足を運んでくれる人は私の知人や友人がほとんどでした。

今回は、制作以外のところは全部お任せしています。これも私にとっては新しい取り組みです。新しい出会いが生まれたらいいなぁってとても楽しみにしています。

 

新作『tenderly』の発表までもう間もなくです。多く方のご来場を心よりお待ちしています。