銀瓶(純銀製湯沸し)の見どころ

2013.12.01  コラム 茶の器

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日本の伝統的な金工技術の粋である「銀瓶:ぎんびん(純銀製湯沸し)」について解説します。銀瓶は茶の湯の世界で長い間育まれてきました。他の茶道具と同様、権力者たちのステータスシンボルでもあり、また貴金属を用いる道具でもあることから、贅をつくして製作されてきました。これが高度成長による需要増、加工技術の発展の影響で、いまではさまざまな銀瓶が出回るようになりました。

 

■銀瓶断面(鎚起)

Cross-section view of high class pot

銀瓶断面(鎚起)

もともと銀瓶は、非常に高価な地金を用いることもあって、無駄なく、また洗練された形状をしています。上は本来の銀瓶を断面にあらわしたものです。一枚の金属塊もしくは厚板を、金鎚を用い打ち延べて成形してゆきます。

特筆すべきは、部分的に厚みが違うことです。見た目の美しさ、重厚感と、使いやすい重さ、重さの重心を追求して成形されています。底部は五徳が当たるために、ある程度の肉厚をもたせてあります。火にかける薬缶(やかん)の究極の形状と呼べるでしょう。

 

■銀瓶断面(へら絞り)

Cross-section view of cheap pot

銀瓶断面(へら絞り)

こちらは、安価な工業成形品になります。へら絞りと呼ばれる、高速回転させた板を力ずくで絞り成形したものです。均一な厚みで、非常に軽く作られています。

 

 

■合口断面(鎚起)

Structure of neck (high class)

合口断面(鎚起)

蓋を納める、くびれの部分の断面です。銀瓶の見どころは、蓋を外し上から見た際の重厚感です。銀の肉を、金鎚を巧みにつかって合口の部分に寄せてあります。活端、池端(いけはた)と呼ぶ伝統技法です。高級な銀瓶は、蓋を外した状態で内側を指でなぞると滑らかな断面をしているのですぐに判ります。

 

 

■合口断面(へら絞り)

Structure of neck (cheap class)

合口断面(へら絞り)

こちらは、機械成形の安価なもの。活端で作られているかのように、リング状の板を嵌めて摸してあります。内側を指でなぞると、明らかな段があるのですぐに判ります。

 

 

■霰模様鎚起

霰文様

霰 文様 Arare pattern

Shape of Arare (high class)

霰模様(鎚起)

多種ある銀瓶の中でも、もっとも人気の高いものは、霰(あられ)と呼ばれる突起のついたものです。この霰にも、良質なものから安価なものまでさまざまあります。下に、霰の良いものの見方を記します。

 

Shape of Arare (high class)

霰模様(鎚起)

霰は、綺麗な円錐形で突起の先が尖って見えるものが伝統的な上級品になります。この突起をひと粒作るだけでも、一度ではなく道具を何度も押し当て打ち込まないと綺麗な霰が出来ません。突起が尖っているので、銀瓶全体についた霰が華麗に上品に見えます。胴の中心部にゆくほど、突起が大きくなっているのが特徴です。

 

 

■霰模様(へら絞り)

Shape of Arare (cheap class)

霰模様(へら絞り)

安価なものは、突起が図のように丸みを帯びています。機械で一度に突起を成形するために、起伏はできるだけ低く、また力ずくで突起を成形しても破れないように先が丸くなっています。これでは綺麗な、連続的でかつ立体的な霰模様を出すことは出来ません。中心部と上下の端と、突起の大きさに差があまりありません。

銀瓶もさまざまなものを目にすることがありますが、これらの見どころを踏まえて見ていただくと、安物を高く買ってしまうことはないでしょう。お買い求めの際には、ぜひこれらを参考にしてください。