若芽、そして新緑の薫る爽やかな会場には、バッハの曲の旋律が聞こえて来そうな、丹精こめて織った足立真実さんの作品がいくつも展示されています。

 

糸を染める材料は季節の植物・・・
今回の作品では臭木（くさぎ）からとれる上品な濃淡の水色で織られた振袖は、とても清らかで美しく、訪づれてこられたお客様から感動の溜息がきこえます。
（ギャラリー担当　やまなかかづこ）

―展覧会によせて―　　足立真実
J.S.バッハが眠る教会を訪れたとき、演奏会のための練習が行われていた。
聖歌隊とオーケストラの奏でる教会カンタータの響きわたる聖堂の中で
私はバッハの墓がある祭壇の傍らに腰を下ろした。
高い天井から連なるいくつもの窓には、
聖人たちと並んでバッハのステンドグラスも観られた。
バッハに包み込まれた至福のひととき・・・
外には春を待つ白木蓮がたくさんの蕾をふくらませていた。

片田舎の、フィールド広がる中にポツンとある教会に訪れたのは、新緑の眩しい季節。
石造りの小さなその教会は　中世ロマネスクの古寺。
パイプオルガンに触らせてもらえた。
私は何も弾けないのに、オルガンの前に座って鍵盤に触れる、
パイプから空気が送られてくる、大好きな音色が教会に響く・・・
とてもドキドキした。
外の明るい日差しを受けて、ブルーと赤のステンドグラスがキラキラ輝いていた。

大都会にそびえ立つ煤けたような大聖堂は「黒の教会」と呼ばれている。
雨が降り濡つ中、運河に臨んで建っているその聖堂に入ると、
繁華街の喧騒が嘘のような神聖な空間が広がった。
天窓には見事なゴシック風、
壁面にはモンドリアンのコンポジションのようなモダンなステンドグラス。
聖マリア像の前ではキャンドルが静かに揺れていた。

重い扉を押し、聖なる空間へ一歩踏み入れるときの高揚した気持ち、
目の当たりにする装飾の素晴らしさに息を呑む瞬間、
その空気の中に身を置くことへの感謝の気持ち、
いつまでも胸に留めて　感動する気持ちと緊張感を持ち続けたい。

会期は４月２６日（土）５時まで、１１時～６時までの展示です。
清課堂ぎゃらりーにて