仕事場で手を動かすだけでなく、時折他の職人さんたちやデザイナー、大学の先生達と情報交換をしています。京都という土地柄のせいか、もしくはそのライフスタイルのせいか、集まって出てくる話題は「環境」に関することが本当に多いです。
そのお陰で、私共も少しずつですが環境について考える事ができる様になりました。
温室効果ガス
97年12月に京都で開催された、気候変動枠組条約第3回締約国会議(通称COP3)の影響が多いと思います。ここ京都では、幼稚園・小学校から温暖化に対する教育が徹底しています。親子で考える機会が他府県に比べてかなり多いのでは、と思います。上に土地柄と書いたのは、COP3に関連があるのではと推します。
伝統的な工芸品の製作に照らし合わせてみると、やきものや鋳金など、大きなエネルギー消費をする製法にかかわる問題です。
廃棄物の処理
これも、やきものと鋳金の世界で話題になっています。陶磁器の焼成過程で出た不良品は、土に埋めるしか方法がありません。硬化してしまった土や石粉は再利用が非常に難しい素材です。鋳金の世界で用いられる鋳物土や鋳造材料もそれとよく似ています。
有害物質の不拡散
埋め立てるしかない不要な焼き物の中には、釉薬に鉛やカドミウムが含まれているものが多いようです。酸性土壌で溶出し、土壌汚染につながるのでは、と心配されていました。近年ようやく鉛やカドミウムの含まれない釉薬が急速に広まったので、今後は問題が少ないと思います。
鉛やカドミウムも人類にとっては非常に有用な素材ではありますが、これは人間の手で徹底して管理せねばなりません。行き先がわからず、ゴミとして燃やされたり埋められたりしないようにすることが大切です。絵の具のチューブ、狩猟用の散弾、釣り用の重り、蛍光灯のガラスなど工業製品でも同じような考え方がされ、近年は鉛の使用が制限されています。
資源の回収・再利用
これは私共が携わる金工に関連しています。世界中で金属需要が高まり、非常に手に入れにくくなった素材です。出来る限り大切に使ってゆかねばなりません。
効果的に再利用をする仕組みが無い現状、これを整えてゆかねばと考えています。(回収した製品を地金として再利用するには、精錬が必要です。金属の精錬には膨大なコストとエネルギーを要します)
長期使用・再利用については、金属工芸品ならではの長所だと思います。修理がきくので末永く使うことが出来る素材です。古来から、親から子へ受け継ぐのが一般的ですし、万一いらなくなったとしても骨董品店・アンティーク店などを通して第二、第三のいのちを与えられることもあります。