弊堂の3名の社員が、京都府北部の山奥にある「京都伝統工芸専門学校(現大学校)」の卒業生で、また同校の金属工芸科講師でいらっしゃる浅野美芳氏から私自身も鍛金を習いました。本年の同校卒業生展覧会を興味深く見てまいりました。
例年、ざっと早足で見回して、興味の惹かれる作品だけあらためて集中的に見てゆきます。
金工の分野で興味をひかれたのは、銅でできたコーヒーカップ。熱伝導の高い銅に熱いコーヒーを入れられるはずもなく、技術度も低い作品でしたが、デザイン上のバランスがよいことと、カップの表面にソーサーが映り込み、まるで色を塗り分けたように見えるアイデアがよかったです。
これも例年のことですが、展覧会全体をみるとやるせない気持にもなります。伝統工芸と名前がついていても、彼等が学んだのは伝承工法、古典的意匠でしかなく、それは高い学費を払ってまでやることには思えません。お金を払わなくても、たとえ無給ででも丁稚修行させてもらえる工房は沢山ありますし、独学でも出来ない次元のものでもありません。
仮に伝統をお金を払って学ぶせっかくの機会ですから、変化を続ける世の中からも受け入れてもられるような順応性や革新性をも併せて学んで欲しいとおもいます。次代に伝わらない、残らないものは伝統ではありませんから。