ファイバーメタルアーティスト“やまなかかづこ”さんの個展まで、まもなくとなります。
清課堂ギャラリースタッフが、“やまなかかづこ”さんにインタビューした内容を2回に分けてご案内します。第1回は、ファイバーメタルアートとの出会いや素材について、伺ってまいりました。
― まずは、金属線を編むということについて、伺いたいです。
鈎針(かぎばり)はご存知ですか?子供のマフラーや帽子を作るときに良く使われている、編み物の道具です。毛糸の代わって、細い細い金属の線をこれで編んでいくんです。もともと私の母が編み物上手だったんです。それで真似して、私も良くやっていました。編む素材が毛糸か金属線かの違いだけで、編み物の大抵のことは金属線でもできるんです。 (実際、金属線を使うアーティストの多くは、コサージュや帽子、洋服を作品にしています。)
― 制作のきっかけを教えてください。
清課堂でお店番をしていた時、部屋の片隅に巻いた針金を見つけたんです。そのときにこれを編もうってパッと閃いて、やってみたら面白くなって次々にしたいことが膨らみました。
― 素材となる金属線、日常にはあまり見かけないものですよね?
身近なもので言えば、小学校の時に電池の実験で使うエナメル線かしら。この材質は銅線なんですが、他に素材となる金属線を探すのが何より大変でした。今と違って、当時は金属線を編むということをしている人がいなかったから、細い線にしてもらわなくちゃいけなかったんです。そんな相談に乗ってくれるお店がまず思いつかなかった。紹介してもらったり、自分で歩き回ったり、調べて電話したり。信頼できるところを見つけても、一回の注文は10キロ以上とかで。
重さで言われても、正直ピンと来なかったんです。でも、どうしても欲しかったのでお願いしたら、とっても大きなコイルが届きました。そのときは本当にビックリしました。今でも10キロでどれだけできるか、わかりません(笑)。
― 使われる金属線はどのくらいの種類があるのですか?
私が制作で使うのは、銅と真鍮(しんちゅう)とステンレスの3種類です。それぞれ色と硬さが違い、色のバランスだけでなく、カッチリ仕上げたいとき、ふんわりした印象が欲しいときなどというように、作りたい作品のイメージとともに金属それぞれの特性を考えながら、組み合わせていきます。
編み物や裁縫で糸を1本取るのと2本取ることで、風合いや強さが変わるでしょう。金属線でも同じことなんです。金属線の本数と色のバランスを考えて、ようやく糸ができるんです。同じ素材のものを合わせることもあれば、3種類を1本ずつ取ることもあります。
また重要なのが、線の太さです。一番細い直径0.11ミリから0.26ミリまで0.03ミリ毎に太くなるので、太さは5種類あります。改めて考えると、凄い数の組み合わせができますね、今さらですけれど(笑)。
(第2回「自分で決められることもあれば、人に委ねたい時もある。とっても人間らしいと思いませんか?」へ続く)