2015年5月29日に京都を発ち、ミラノ、パリ、フィレンツェ3都市で4つの展覧会(企画展参加を含む)を開くとともに、フィレンツェ-京都友好都市提携50周年記念事業にも参加してきました。帰国まで16日間におよび、休む間もなく移動するスケジュールでしたが、実に収穫のあるプロジェクトとなりました。その場所、その時期でしか見られないものも数多く体験してきました。それらを2回にわたってご紹介してまいります。
ミラノ「日本の金工のいま」 清課堂 山中源兵衛 展
ブレラ地区Vicolo Ciovasso 1- 20121 Milano Italy ギャラリー「アルテジャッポーネ」にて
2015年6月1日(月)~6日(土) 14:00~19:00
レセプション 2日(火)18:00~20:30
トークショー 3日(水)、4日(木)のそれぞれ18:30~20:00
今回イタリアでは清課堂初めての個展となります。京都の伝統的な技や感性を表した作品、清課堂の今の仕事のご紹介、また初めてお披露目する新作の発表を行いました。
期間中は、たくさんのお客様、メディア関係者、デザイナーやアーティストをお迎えして盛大なレセプションパーティーを開催したほか、日本の金工の歴史を振り返りながら清課堂独自のデザインや取組をご紹介するトークショーも開催しました。
最近は鋳物の量産品の日本製錫器も海外でよく見かけるようになりましたが、金鎚で一つ一つ打ち出したり、ロクロとカンナで緻密に削り出したりと、人間の手でしっかり作りこんだ作品たちを、じっくり手に取って見ていただく良い機会になったと思います。
2日(火)18:00より行ったレセプションでは、鍛造のぐいのみに日本酒を注ぎ、ご参加の皆さまに清課堂の錫の酒器をお楽しみいただきました。よく冷えた銘酒「月桂冠」と、鎚目ぐいのみ二種ご用意し、それぞれの美しい肌、手にもった感触、唇に触れた感触を実感していただきました。
製造工程と店舗を紹介したムービーを会場で常時放映しましたところ、映像にじっくり見入る方々が多くおられました。言葉での説明も大切ですが、視覚は言葉を超えるなにかがあるようです。
二日間にわたって行ったトークショーでは、銅鐸を起源とし仏教と茶の湯の興隆とともに日本独自に進化した金工の歴史背景や意匠について、また江戸時代の町民の間に広まった趣向品、その見どころなどを写真を交え紹介しました(イタリア語通訳有り)。現在の清課堂におけるデザインや製品開発、世界的な文化交流の取り組みなどについてもお話したところ、お集まりいただいたなかでもとくにクリエーター達からご好評をいただけたと感じています。今後も引き続き、単に作品の展示/発表だけでなく、映像やトークを交えたイベントの必要性を痛感しました。
今回ミラノで堂々とデビューを果たした、錫製デミダスカップ。カップとソーサー、スプーンのセットになっています。
断熱と装飾を目的として、漆器の技術を組み合わせたものです。
珈琲文化の盛んなイタリアでぜひともこれをご紹介したく、漆芸家の石川良氏とともに半年がかりで作り上げました。スプーンは黒檀製。
発売時期価格未定。現地でいただいたご意見を踏まえてさらにこれを洗練し、日本での販売を予定しています。
色や大きさ、様々なバリエーションの構想もあります。
このほか会場では、銀製の延べ煙管が大変好評でした。もともとパイプを用いて喫煙される方が多く、この日本独特の煙管にも興味をお持ちの方がたくさんおいででした。
Le Festival du Design Grand Paris 出展
ミラノの個展開始直後の6月1日、私山中源兵衛はすぐパリへと発ちました。パリで行われるデザインのイベント、「Le Festival du Design Grand Paris」(通称D’Days)の記者発表およびレセプション、表彰式、内覧会に出席するためでした。サンジェルマン、マレなどパリ市内各所で行われる同イベントのうち、中心部ルーブル美術館のすぐとなりに位置する、「Musée des Arts Décoratifs, Paris(パリ国立装飾美術館)」の2階の大きな一室を使っての企画展覧会となりました。
(レセプションの様子。国を挙げてのデザインイベントだけに、その参加者の顔ぶれと人数は大変なものでした)
このD’Daysでの展覧会は、アジアでは唯一のフランスのアーティスト・イン・レジデンスでありアンスティチュ・フランセ日本が運営する京都市の「ヴィラ九条山」が、アーティストが京都滞在経験を活かし生まれた作品の発表の場を企画したものです。今年のD’Daysのテーマである『Experience (経験)』と確実にマッチした、工芸とデザインとアート(また空間構成)の融合作品となりました。作品「Le petit théâtre de lumière(光の小劇場)」は、デザイナーのゴリアト・ディエーヴル、金箔工芸作家のマニュエラ・ポール=カヴァリエ、清課堂山中源兵衛によるコラボレーション作品です。
「Le Festival du Design Grand Paris」(通称D’Days) パリ市内各所
2015年6月1日(月)〜7日(日) 11:00~18:00
エリア パレ・ロワイヤル会場 :フランス国立装飾美術館 2階特設展示場
1日は内覧会およびレセプションパーティ
3日(水)18時30分~、国立装飾美術館館長オリヴィエ・ガベ氏とアーティスト2氏による講演会
作品は、6m×9mほどある大きな会場自体が光を要素にした一つの作品になっていて、その中の床の間に見立てたさらに小さな3つの空間に、テーマを分けた小作品が並んでいます。清課堂は鍛造と一部鋳造の技術を用い、ディエーブル氏のデザインした彫刻作品を具現化しました。そこに、ポールカヴァリエ氏が様々な種類と技術を用いて金属箔を押して装飾を加えています。LED照明を組み込んだライト本体も、清課堂が錫を用いて製作しました。
会場では、半年にわたるゴリアト・ディエーヴル、マニュエラ・ポール=カヴァリエ、清課堂との交流や数々の製作試験、実際の製作の風景写真などもあわせて展示しました。
D’Daysはフランス最大の人気イベントだけに、連日大勢の方々にご覧いただいただけでなく、京都とパリの相互文化交流にもなったと思います。1日の内覧会当日にはフランス政府文化大臣に、4日には京都府知事、府議会議長および議員団、商工会議所副会頭にもわざわざお越しいただきました。
またこの「Le petit théâtre de lumière(光の小劇場)」は、フランスのデザイン・インテリア専門誌「AD Magazine 」がおよそ130ほどある出展作品中から選ぶ、トップ15にも選出されました。
引き続き、この発表した作品たちは本年2015年秋のニュイブランシュの時期に京都清課堂でも同作品を展示、皆様方にご覧いただく予定です。どうぞお楽しみに。
関連するご案内
・ヴィラ九条山のD’Daysレポート(会場、作品写真がご覧いただけます)
・フランス最大のデザイン・フェスティバル『D’DAYS』に工芸とデザインのコラボ作品出展!
・D’DAYS トークイベント 作品『Le petit théâtre de lumière』を通じてポストジャポニズムを考える
私、山中源兵衛は、パリ、ミラノを後にして、フィレンツェ入りしました。
展覧会レポート後編「欧州での展覧会、交流事業ご報告 その2」へと続きます。
(Yamanaka)